災害に対する都市部の脆弱性について
自然災害の脅威ランキングで「東京・横浜が世界1位」
スイスの再保険会社スイス・リーが2013年にまとめた、自然災害の脅威にさらされている都市の世界ランキングで、東京・横浜が世界1位。
注釈:自然災害の脅威にさらされている都市の世界ランキングの原題は「Mind the risk A global ranking of cities under threat from natural disasters」)
世界616都市を対象に洪水・嵐・地震・高潮・津波など災害に被災する人数を推計した本報告書によるとトップ10はアジアの沿岸都市が占めている。
東京・横浜の他には大阪・神戸が5位、名古屋が6位であった。
東京・横浜では推定被災人数は約5710万人、大阪・神戸は3210万人、名古屋は2290万人となっている。
これらの都市は地震が活発な地域に位置していること・沿岸部であるために津波の危険性が高いこと・暴風雨や河川氾濫による洪水のリスクが高いために上位にランクインしている。
トップ10は以下の通り。
- 東京・横浜(日本)
- マニラ(フィリピン)
- 珠江デルタ(中国)
- 大阪・神戸(日本)
- ジャカルタ(インドネシア)
- 名古屋(日本)
- コルカタ(インド)
- 上海(中国)
- ロサンゼルス(米国)
- テヘラン(イラン)
市街地が密集していることによる危険性
明治・大正期のままの歴史的な街並みや高度経済成長期以降に都市部に人口が流入し急増する際に計画的な都市開発と整備が行われなかったことにより、老朽化した木造建造物が密集する市街地が全国に約2万5千ヘクタール、そのうち東京・大阪にそれぞれ約6千ヘクタールの存在する。
これらの市街地には狭い敷地・細い通路を挟んで建物が密集しているため、大地震発生時に建物の倒壊により通路が塞がれてしまい避難や救急車両の通行が困難となって人命救助や消火活動の障りとなる。火災が発生した際には大規模な延焼を起こす可能性が高い。
また、公園や広場等のオープンスペースが少ないので避難所の開設が困難となる。
水害が発生しやすく拡大しやすい
都市の形成に伴って地表面がコンクリートやアスファルトで覆われたため、雨水が地下に浸透し難くくなっている。
短時間に大量の雨が降ると雨水が一気に排水溝や下水道へ流入してしまい河川への排出処理が間に合わないため、ゲリラ豪雨や台風に伴う集中豪雨によって地下に浸透しなかった雨水が市街地に溜まって生じる水害(内水)が多発する可能性が高い。
国土交通省の水害統計によると、全国と東京都における内水と内水以外による被害額の割合は、内水による被害額は全国では41%となっているのに対して東京都では71%となっている。
また、大型河川の下流付近に位置している田園や湿地帯であった土地を市街地化したところも少なくないため、地震発生時には液状化したり地盤沈降によって海抜ゼロメートル以下となって長期浸水したりする危険性もある。
地下施設への浸水とそれによる二次被害
都市部では地下街や地下室の設置が多く、集中豪雨や洪水によって短時間に浸水して水没する危険性が非常に高い。
また、マンションにおいてはエレベーターや給水設備等の電気装置は地下室に設置しているため、浸水による直接被害の発生する地下階層や1階部のみでなく、浸水によって故障したエレベーターや給水装置の停止による二次被害が発生する。浸水や地震によってエレベーターが停止した場合にはエレベーター内への閉じ込めが発生する。被害発生箇所が多数かつ広範囲の時には復旧・救出に多大な時間を要する。
地下に浴室やトイレがあれば下水道が逆流して生活排水や汚水が噴出してしまうため不衛生な環境となり体調不良を起こす可能性がある。
地震時に空から危険が降ってくる
建物の高層階化進んでいるため、地震によって破損した窓ガラスやビル外壁が落下する。地震の揺れで身動きが取れない歩行者や建物内から外へ逃げ出した避難者はこれらの落下物からも身も守る必要がある。
災害が同時多発すると被害が大きくなる
災害は単発で発生するというものではないので、地震・津波・浸水・火災・延焼・豪雨・河川氾濫 等々によって交通機関のマヒ・多数の帰宅困難者の発生・電気ガス水道等のインフラ崩壊・事業活動の停止 等々、様々な被害の可能性を孕んでいる。
また、家屋の倒壊や浸水によって他地域への人の移動が制限されたり他地域からの物資供給が絶たれたりす可能性も高く、巨大地震による全国的な被害が発生した場合には都市部のみでなく地方や僻地も同じく被災しているために相互援助は期待できない。
加えて、首都圏は国家の中枢機関が集中しているため国としての機能停止という事態にもなりかねない。
最後に
市街地暮らしの便利さの裏側に潜む危険を知るにつけ「今さらどうにもできない」「人力ではどうしようもない」感が否めませんが、そうは言ってられません。
「自分で情報を収集してできる限りの対策をしておくしかない」というと何とも心許ないですが、本当にそれしかない無いのかもしれません。
以上